働き方"デザイン"研究所

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台風だから明日は休んでください――この時の給料ってどうなるの?

f:id:lapislazuri33:20181002204321j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

9月に発生した大型台風に伴って、出勤ができない人もたくさんいたのではないでしょうか。

今年は台風だけでなく大型地震による天災地変が起こるなど、非常に大変な一年です。

台風や大雨により、会社から出勤停止や臨時休業についての相談が非常に多くありましたので、今回は災害時の労務対応についてご説明いたします。

  
  

  
  

ノーワーク・ノーペイの原則と休業手当

まず最初に、従業員は労働する義務を負い、企業はその労働に対する給与を支払う義務を追うことになります。
給与は労働に対する報酬として支払われますので、労働がない部分に対しては従業員側の義務不履行となり給与の支払義務が発生しないことになります。
月給者の方は想像しにくいと思いますが、時給者の方ですと働いた時間分だけ給与が支払われますよね?
ノーワーク・ノーペイはその真逆の考え方で、働かない部分については給与を支払わない、という意味です。

一方で、従業員側が働く意思を持っているにも関わらず、何らかの理由で働けない場合については労働基準法により、

休業手当
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」

と定められており、使用者の責めに帰すべき事由(会社の都合)で従業員を休ませた場合は、平均賃金の6割以上を休業手当として支払う必要があります。

では、台風・地震を理由に従業員に対して出勤停止を促した場合は、どうなるのでしょうか?

  

台風・大雨を理由とした出勤停止

結論から申しますと、給与を支払う義務はありません。

会社の命令により出勤停止となった場合、一見「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するように感じますが、この事由には天災事変等の不可抗力*1の場合は該当しないと行政解釈で示されています。

会社に責任がないので、賃金を支払う必要がないのです。

ただし、次の場合には、休業手当の支払いが求められる可能性があります。

  • 台風が直撃する地域ではなく、若しくは大雨の影響が大きくない等、通常通り出勤ができるにも関わらず会社の判断で出勤停止命令を出す場合

  • 午前中は通常通り出勤しており、午後から台風による公共交通機関の乱れを懸念して早退命令を出す場合

早退命令により午後から休業させる場合は、対象となる1日において支払われる給与を計算し、その金額が平均賃金の6割を下回っていれば、差額を支払うことになります。
ということは、もし早退命令により午後から休業させたとしても、現実に働いた給与の金額が、平均賃金の6割以上であれば、休業手当の支払いは必要がないということです。

給与の支給・不支給について判断を迷った際は、不可抗力の判断を曖昧なまま行わずに専門家に相談することをお勧めします。

  

台風・大雨を考慮した有給扱い

有給休暇は従業員の権利ですので、会社から台風・地震の被害を考慮したとしても、有給休暇を強制的に取得することは労働基準法に抵触します。

ですので、会社から一方的に「台風の為出勤ができない人もいますので、明日は有給休暇として従業員は全員休んでください」と指示してはいけないのです。

しかし、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて出勤をしなかった人は無給扱いとするが、有給休暇の取得促進日として従業員の任意的な使用を促す方法については、問題ありません。

  
  

災害時における労務管理の大切さ

台風・大雨の影響による出勤停止について「給与を支払う必要はない」「有給休暇取得促進日として、任意的に有給休暇を取得してもらう」と説明しましたが、 経営者の方から相談をいただいた際には、「出勤停止の命令はするが、通常通り賃金を支払うこと」を提案しております。 というのも、多少無理してでも出勤をしたいと考える方がいるからです。

天災により出勤停止になると、取引先の会社も同じように臨時休業になっているケースが多く、平常時よりも電話やメールに追われることなく、集中して仕事に取り組むことができます。 給与の減額もなく、集中して仕事ができるのなら、多少の無理も承知の上となります。

都市部だと沿線によっては運休していない場合もありますし、マイカー通勤ならば出社する手段は残っていますが、どの手段であっても、通勤中に危険を伴ってしまいます。

万が一、従業員が大雨の中で車を運転し、人身事故を起こしてしまった場合、会社に対して安全配慮義務違反として損害賠償請求が問われる可能性は否定できません。

従業員の安全面を第一に考えて、トラブルを未然に防止することが大切ではないでしょうか。

  
  


*1:不可抗力とは、次の2つの要件を満たす必要があるとされています。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大限の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること