働き方"デザイン"研究所

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夢の国での現実問題――パワーハラスメントについて考える

f:id:lapislazuri33:20181113213849j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

開業して35年を迎えた夢の国、ディズニーランド。

皆さん、一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。

愛くるしいキャラクターだけでなく、スタッフの方々も、

訪れた方を全力で楽しませてくれますよね。

そんな夢の国、

東京ディズニーランドの運営会社である、オリエンタルランド株式会社が、

2名の女性従業員よりパワーハラスメントがあったとして

計約755万円の損害賠償を求める訴訟が、千葉地方裁判所にて起こされました。

夢から醒めてしまうような、現実に引き戻されてしまうような、悲しいニュースです。

今回はこの問題について、パワーハラスメントの基本的な部分を解説いたします。

  
  

  
  

ハラスメントとは

そもそも、ハラスメントとは具体的にどのような状況について言われるのでしょか?

ハラスメントの代表格として、

  • セクシュアルハラスメント

  • パワーハラスメント

は皆さん聞き覚えがあるのではないでしょうか。

他にも、マタニティハラスメントやアルコールハラスメントといった様々な種類もありますが、上記2つは非常に有名なトラブルの種だと言えます。

中でもパワーハラスメントは、先輩や上司といった目上の人から仕事上でプレッシャーをかけられたり、いじめられたりすることを指す言葉と認識していると思います。

実は、先輩や上司から、といった目上の人の立場だけではないんですね。

厚生労働省によると、

職場で起こり得るパワーハラスメントについて、

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

と定義されており、

  • 上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること

  • 業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること

上記2点に該当してしまうと、

上司・先輩から部下への矢印だけではなく、

部下から上司・先輩といった逆向きのパワーハラスメントも成立することになります。

同僚から同僚といった立場が同じ従業員の間だとしても、同じようにパワーハラスメントとされるケースも考えられます。

パワーハラスメントが及ぼす影響は非常に大きく、単なる職場環境の悪化やハラスメントの被害者の退職にとどまらず、うつ病やPTSD*1といった精神疾患の発症を促す場合もあります。

最悪のケースでは、自殺にまで至る可能性のある、悪質な問題なのです。

  
  

夢の国から現実へ

今回、ディズニーランドで起こったのは、典型的なパワーハラスメントです。

まず訴状によりますと、訴えを起こしたのは、20代、30代の女性2人です。

ディズニーランドのテーマパーク内で、パフォーマンスショーへの出演など、キャラクターの着ぐるみを着用してパフォーマンスをしていたようですが、怪我や体調不良になってしまっても、

「病気なのか、それなら死んじまえ」
「30歳以上のババアはやめちまえ」
「エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ」
「やる気ないやつは全力でつぶす」

といった典型的なパワーハラスメントの発言を浴びせられていたようです。

原告の主張の中では、上司を含む従業員12人からパワハラを受けていた、と一人ではなく複数の従業員からの圧力、特に、業務の性質を盾にした、「君は心が弱い。エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ」という言葉によって、来場者に対して夢を与える仕事と、病気や過重労働とも捉えられる現実の狭間に閉じ込められていたと感じます。

会見では、

「ゲストが第一なので、自分さえ我慢していればゲストの夢を壊さないという気持ちだけでやってきました。ディズニーが悪いわけではありません」
「何度上司に相談しても変わらず、相談することにより、逆にひどくなっていくいじめ。現在も続いているいじめをなくし、安心して働ける職場になってほしいと願い、今回の裁判に踏み切りました」

自身の気持ちと、自身が訴訟を起こすことによって与える影響力の強さを客観的に受け止めて、訴訟に至ったとしています。

これを受けてオリエンタルランドは、

当社は、現在、訴状に関する事実関係の調査等に真摯に取り組んでおり、当社の見解につきましては、今後の訴訟手続きにおいて主張してまいります。

としています。事実を明らかにし対応していく、現実的な問題をきちんと判別し、受容する姿勢を見せてほしいですね。

来場者の笑顔を大切にするのであれば、まずはそこで働く従業員も大切にされなければ本当の夢の国は作れないのではないでしょうか。

パワーハラスメントの難しさ

パワーハラスメントを考える上で職場の優位性は非常に大切な判断材料になりますが、

上司と部下、先輩と後輩といった指導する立場と指導を受ける立場の関係においては曖昧な部分が生じることも否めません。

この「指導」は指示・命令・叱責も業務内容になると思われますので、仕事のミスを叱っただけでパワーハラスメントと言い切るのは筋が通りません。 一方、仕事のミスに対して、部下や後輩の尊厳を踏みにじる発言が認められないのも確かです。

今回、ディズニーランドで起こったことが事実であれば、紛れもないパワーハラスメントです。働いていた人は、ディズニーが好きで、人を笑顔をするためにキャストになり、全力で仕事に取り組む方が多かったと感じます。そんな方がハラスメントから守られて、自分の仕事に熱中できる環境になり、働く人からしても夢の国になることを祈りたいですね。

*1:Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害