働き方"デザイン"研究所

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会社を辞めるとき、退職願と退職届どっちが必要なんですか?――違いを知って円満な退職を!

f:id:lapislazuri33:20181015173726j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

在職する会社からステップアップのために転職活動をされている方もいらっしゃると思います。

仕事の合間を縫って職務経歴書を作成したり、実際に面接に出向いたりするとなると本当に大変ですよね。

しかし希望する会社からようやく内定を貰った!となったとしても更に大変な手続きが待ってます。

それは退職です。

在職している会社に辞める意志を伝えるわけですが、非常に大きな壁と感じている方も多いのではないでしょうか。

私も一度転職しているのですが、
朝一番に上司に駆け寄って「少しお時間いただけますか?」と夕方に話す機会を設けていただいてから、
朝から夕方までの約10時間程度、朝から夕方まで胃をきりきりさせながら仕事に取組んでいたことを今でも覚えています。

このように会社を辞める決意をした後は上司に相談や報告をするかと思いますが、その後は

退職願

退職届

のどちらかの書類を会社に提出するように指示がされるケースが大半です。

さて退職『願』のか、退職『届』なのか、一文字しか異ならない書類ですが、実は法律的な効力も異なるんですね。
今回はこの退職願と退職届について解説いたします。

  
  

退職のための必要な手続き

まず、会社を辞めるということは、

雇用契約の解約

をすることになるのですが、
雇用契約の解約の方法は大きく

  • 解雇されるか
  • 退職するか

と言えます。
この中で解雇は、
会社から一方的に実施されるものですので、働く側の意志とは関係なく行われるケースが基本的です。

退職については、更に次のパターンに分類することができます。

  • 働く側から一方的な解約

  • 働く側と会社の双方の合意による解約

「会社を辞めるときは働く側から一方的なんじゃないですか?」と疑問にもたれる方も多いと思いますが、
私の感覚としては、

一方的な解約は「会社と喧嘩して別れる」ことが当てはまり、話し合う場を作らない

合意的な解約は「お互い納得して別れる」ことが当てはまり、話し合う場を作る

少々極端に思えますが、
このように捉えると自分が考えている退職方法がどちらに該当するのか、分かりやすいのではないでしょうか。

では退職の意思が固まった後に会社へと提出する書類について、 違いをみていきましょう。

退職の意思表示については口頭でも可能ではあるのですが、 「言った」「言わなかった」 トラブルに非常になりやすいケースですよね。 ですので退職願および退職届といった書類によって、自分自身の意志を客観的な書類にて会社に提出することが重要なんですね。   

退職願の性質とは

退職願ですが 「この日をもって退職したいのですが、お願いできますでしょうか」

と会社を一方的に辞める意思表示ではなく、 会社に対して退職のお願いを申し出る書類になります。 ですので、働く側の意志が決裁権者*1のもとに到達し、受理された時点ではじめて雇用関係が解約されるわけです。
あくまでも合意に基づく、雇用契約解約の申し出と言えます。

退職届の性質とは

退職届は
「この日をもって退職します」
と働く側から一方的な退職の意思表示となりますので、合意解約とは異なり人事に関する決裁権者に意思が到達した時点で効力が発生することになります。

  
  

申し出た退職の意志の撤回は可能?

会社に対して、辞めます!
抱えていた気持ちを伝えた後は、
晴れやかになる一方で、本当に自分の選択が正しかったのか不安が大きくなる方もいらっしゃいますよね。
「辞めるっていうタイミング、早かったかな」
「上司としっかり話し合って、もう少し頑張れば良かったかも」
失ったときこそ自分の本当の気持ちが分かりますから、退職するタイミングで自分の天職に気づいてもおかしくありません。

そんなときに、退職願を出したケースと退職届を出したケースによって、対応方法は異なります。

退職願
退職の意思表明を決裁権者が承諾するまでは、自分の意思で撤回できます

退職届
決裁権者に対して意思が到達した時点で退職の効力が発生してしまうので、自分の意思では撤回できません

ただし、退職願についても承諾がなされてしまいますと、自分の意思で撤回はできませんので注意が必要です。

  
  

退職するときこそ円満に

退職願や退職届といった雇用契約の解約手続きについてご説明しましたが、
この解約の申込みは、口頭でも効力を発揮してしまいますので、
退職についても売り言葉に買い言葉で言い出してしまい

「今月いっぱいで退職します」

と上司に伝えてしまい、上司が納得してしまうと極端に言えば合意解約が成立することになります。

大阪地方裁判所では、
働く側が会社を辞めることについて、生活していく基盤を失うことと同じであるため、
本当に会社を辞める意思があるのかどうかの認定は慎重に行う必要があると判決を下しております。

大通事件(大阪地裁平成10年7月17日判決)
労働者による退職又は辞職の表明は、使用者の態度如何にかかわらず確定的に雇用契約を終了させる旨の意思が客観的に明らかな場合に限り、辞職の意思表示と解すべきであって、そうでない場合には、雇用契約の合意解約の申込と解すべきである。

従って、
* 明らかに会社を辞める意思がある
* この日に辞める、と時期も確定していて、辞める日まで出社を拒否している

などの客観的に見て意思が確固たるものである場合を除いては、
勢いあまって「今月いっぱいで退職します」と退職届を出してしまったとしても、
きちんと筋を通して上司と協議すれば退職は取り下げてもらえるのではないでしょうか。

ちなみに退職願を提出して、会社から認められた後に退職届を出す場合があるようですが、
厳密には必要ありません。
一度意思表示が会社に到達した時点で退職についてはよほどのことが無い限り認められます。

退職願と退職届、たった1文字しか違わないのですが、会社を辞める際には重大なトラブルになりかねません。
意思が固まっていたとしてもモラルの観点からまずは退職願で会社と協議をし、お互いに受け入れが可能な日をもって退職できるように、辞める側もできる限り配慮することが望ましいと言えます。
一方の会社側も、退職の意思が固いのであれば、法律に反して無理に引き留めたりせずに気持ちよく新しい生活へと背中を押してあげましょう。

今回の記事と重複している箇所もありますが、こちらの記事で退職の時期について解説していますので、併せて読んでいただけると幸いです。 lapislazuri33.hatenadiary.jp

*1:社長だけでなく人事部長等が該当する場合もあります