働き方"デザイン"研究所

せっかく働くのだから楽しくしたいよね。という考えのもと、知っておくべき情報を発信します。

退職って2週間前に伝えればいいんですよね?――退職の決まりについてご説明します!

f:id:lapislazuri33:20181014171719j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

キャリアアップのために別の会社へ転職する場合や、
公務員試験を受けるために勉強へ専念したい場合において、

現在の会社を退職するという選択を選ぶ方、いらっしゃるのではないでしょうか。

大学を卒業してから3年後に退職する割合は3割程度は転職などにより会社を辞めると言われています。

転職するにせよ、公務員試験を受けるにせよ、現在勤めている会社を辞める手続きは避けては通れない道ですよね。

退職したい!と思うのは誰しも自由にできますが、退職の手続きについてはルールがありますので、解説いたします。

  
  

  
  

退職とは

働く人が会社を辞めることについて、
法律的な表現によると結んでいる雇用契約の解約となるのですが、
解約には2種類の方法があります。

  • 解雇
    会社側から一方的に解約することをいい,、俗にいう「クビだから来なくていいよ」がこれに該当します

  • 退職
    働く側から一方的に解約*1することをいい、退職届や退職願により会社を辞めることになります

従って、退職とは、雇用契約を解約する一つの手段といえます。

  
  

雇用契約によって異なる退職のルール

働く側が会社を辞めたいと意思表示した時点で、会社側はこの意思を拒むことはできません。

だからといっていつでもすぐに辞めていいとなると、会社側からすると仕事の引継ぎや代わりの人材を探す準備ができない、等の観点から困ってしまいますので、退職に関して守らなければならない一定のルールがあります。

  

雇用期間に定めがない場合

正社員のように雇用契約に期間の定めがない場合の退職については、民法にて次のように定められています。

民法第627条1項
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

つまり、退職したい日から遅くとも2週間前までに退職する意思表示を会社にすることで退職できることになります。
厳密に言うと、2週間前でなくとも可能ですが、その際は会社から損害賠償請求されるリスクがあるので注意が必要です。

  

雇用期間に定めがある場合

一方で、いわゆる契約社員やパートタイマー、アルバイトのように雇用契約に期間の定めがある*2場合は、正社員とは異なるルールが適用されます。

「この日からこの日までの期間働いてください」と会社からの要望に対して、
「提示されている期間まで働きます」と働く側がその要望に合意するわけですので、
定められた期間の途中で一方的に退職することはできないように同じく民法にて制限されています。

民法第628条
「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。」

やむを得ない事由があるときは退職できるとなっていますが、
病気によって働けない、であったり、家庭的な事情や職場環境に問題があるなどの理由が必要となります。

一方的な退職については制限されていますが、
退職について会社側が納得してくれるのであれば、正社員と同じようにいつでも退職はできますので、 どのタイミングで退職するのか、なぜ退職するのか、しっかりと検討し、会社と話し合った上で判断しましょう。   
  

就業規則を確認して円満な退職を心掛ける

雇用期間の定めの有無によって、退職できるタイミングについてそれぞれ解説いたしましたが、
多くの会社では、就業規則にて「退職の申入れを1か月以上前に行うこと」と規定されているケースが一般的です。
就業規則は会社で定めるルールブックであり、その会社で働く上では守らなければなりませんので、

民法で2週間前に退職ができるから2週間後辞めます!

と法律ばかりを主張するのではなく、モラルを考えた上で判断することをおすすめします。

転職した場合であっても、以前に勤めていた職場の方とばったり出会うケースもありますし、
仕事での関わりもあるかもしれません。
実際、私も前職でお世話になった上司や先輩と一年に一回程度ですが情報交換の場を設けていただき、仕事の幅を広げることもできますので、
会社を辞める際は、ルールを守って円満に退職できることが一番ではないでしょうか。

*1:諭旨退職や定年退職といった会社との取り決めによる退職も該当

*2:雇用期間は2018年4月1日から2019年3月31日まで
のようにあらかじめ働く『期間』が定まっていること。雇用契約書などに明示される必要がある

今日はお休みなんですよ!――そのお休み、休日と休暇のどちらですか?

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こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

皆さん、仕事が休みの日はどのように過ごされていますか?

疲れた体をリフレッシュするために家でのんびり過ごす方もいれば、

キャリアアップの為に勉強に取り組んだり、各々好きなように過ごしているかと思います。

そんな休みの日ですが、休日と休暇や休業といった呼び名が変わったりしますよね。

この呼び方の違い、実は理由があります。

就職活動や転職活動の際に、様々な会社の求人広告を見ていると、

年間休日120日!
福利厚生欄に年末年始休暇やアニバーサリー休暇制度!

なんて書いてある会社もありますよね。

この年間休日に年末年始やアニバーサリー休暇って含まれるのかな? と疑問を抱く方もいらっしゃると思います。

今回は、混同してしまいやすい、しかし明確な違いがある休日と休暇について解説いたします。

  
  

  
  

休日とは

「休日」は、働く義務のない日のことを言います。

働く側としては「働く義務のない日」ですので、当たり前に休むことになりますし、
会社側としては「働く必要のない日」ですので、原則的に働かせることはできません。

会社がどの日を休日にするのかは自由に決めることができますが、
1カ月間ずっと休日とせずに働きすぎると、過重な労働となり健康に悪影響を及ぼしてしまいます。 ですので労働基準法により休日の与え方について、   

第35条(休日)
1.使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2.前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

  
上記のようにルールを決めているんですね。
基本的には、1週間に1回は休ませることを会社としての義務となっていますし、
1カ月の中でまったく休みを与えないのは法律違反となるわけです。

一方で、法律では1週間に1回以上の休日が求められているだけですので、
飲食業やサービス業によくあるのですが、
「シフト変更するから、明日休んでもらっていい?」
と休日に指定する日の前日に指定することについては問題はありません。

ただし働く側からすれば、立てていた予定が崩れてしまうとモチベーションも下りますので、
一方的な命令にならないように配慮することは大切です。

  
  

休暇とは

それでは「休暇」とはなんでしょうか?

「休日」が働く義務のない日とすると、

もともと働く必要のある日について、
働く人の申し出によって働く「義務」を免除してもらえる日

とされており、根本的な部分が休日と異なることになります。

この休暇については、

  • 年次有給休暇

  • 夏季休暇

  • アニバーサリー休暇

など様々な事由の休暇が導入されている会社も多くあります。

年次有給休暇については法律で定まっている制度ですが、
その他の独自の休暇制度を設けることで、他の会社にはないアピールをすることができます。

世の中には失恋休暇という休暇制度もあるくらい柔軟に定めることができますので、
失恋で休める会社ってどんな会社なんだろう?って数ある求人広告でも目が止まるかと思います。
また、働いている人にとっては、休暇を上手く利用してもらうことでモチベーションの向上や、
自分自身のキャリアアップが期待できますので、会社としても企業体質の強化が図れる良い制度かと考えられます。

  
  

混同した場合の注意点

さて、この「休日」と「休暇」の違いは、もともと労働する義務があるのか、ないのか、という点でしたが、気を付けなければならない理由があります。

休日に働いた場合は、割増賃金が発生するんですね。

夏季休暇や年末年始休暇を定めている会社は非常に多くある一方で、

名称こそ休暇ですが、会社全体で休む場合、その日を休暇ではなく実態としては休日となっている可能性が非常に高いのです。

休日とするのか、休暇とするのかは、就業規則の定め方によって変わりますので、 どのように規定されているのか、就業規則を確認してください。

(休日)
夏季休暇として、8月12日から8月15日を休暇日とする。

この場合は夏季休暇の名称であっても、その日に働くと当然休日出勤になりますので、割増賃金の支払いが必要となります。

(夏季休暇)
7月から9月までの間で、夏季休暇として3日間の休暇を与える。

このように休暇としていつ休むのか、働く側に選べる権利がある場合は、働かなければならない日に働くだけですので、休日出勤時のような割増賃金は必要ないのです。

皆さんも休日と休暇の内容について、一度確認してみてはいかがでしょうか。

仕事がないのでシフトの時間よりも先に帰らされました――シフトよりも早く帰った場合の給与ってどうなるの?

f:id:lapislazuri33:20181009213553j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

「今日はお客さんも少ないから、シフトの時間よりちょっと早いけど帰っていいよ」

なんて言葉をアルバイト先で言われたことのある方、いらっしゃるのではないでしょうか。

飲食業を営む経営者の方からするとお客さんの出入りが少ないのであれば、人件費削減のために仕事がなければ帰ってほしいと考えてしまうのではないでしょうか。

大学生の方は、シフトよりも早く帰ることになった!

経営者の方は、シフトよりも早く帰らせてもいいの?

皆さんも気になるケースかと思いますので、
今回はパート・アルバイトの方に対して、シフトで定められた時間より早退させる場合の注意点を、事例を用いて解説いたします。

  
  

  
  

事例紹介

とあるカフェのホールスタッフとして働くアルバイトのAさん

雇用契約の内容
時給:1,000円
10時から16時までの6時間勤務
14時から20時までの6時間勤務
①および②のどちらかを選択するシフト制

上記の雇用契約を交わしたAさんは、
働く1か月前にAさんの働ける希望のシフト表をカフェの店長に提出し、
お互いにスケジュールの調整をしてシフトを決めていました。
  
ある日、②のシフトで14時から仕事に取組んでいたAさんですが、
天候が悪く、お客さんの足取りがなくなったこともあり、16時を過ぎたところで手が空いてしまいました。
そんなAさんを見かねてか、
「今日は20時までのシフトだったよね?この調子だと来客も少ないだろうし、ずっといるのも退屈だろうから今日はもう17時で上がって」
Aさんとしては、本来の20時まで働きたかったのですが、
店長の指示なので仕方なく17時に上がることにしました。
  
後日、17時から20時までの3時間の給与について店長に尋ねたところ、
「時給なんだから、働いていない時間には給与出ないよ」
一言だけ説明があり、早く帰った時間について、給与の支払いはありませんでした。
  
さて、よく耳にする今回のケースでは、どうなるのでしょうか?

  
  

民法と休業手当の考え方

まず、Aさんと店長は、
どのような勤務をしてもらうのか、それに対してどのような対価(給与)を支払うのか、 雇用契約を結ぶことで決定します。

時給の場合、

働いた時間に対して給与は支払われる=働いていない時間に対しては給与は支払われない

が基本的な考え方ですので、
仮にAさんが自分から早く帰ることを店長に伝えたり、
店長から「もう仕事ないんだったら帰る? 帰る時間については給与出せないけど」等のやり取りがあった上で納得して帰った場合は、 ノーワーク・ノーペイの原則が適用できることになり、早く帰った時間については給与は必要ありません。   
  
しかし、今回のケースでは店長から指示が出されている点が問題となります。
Aさんが働きたいと思っているにも関わらず、 顧客がいないという店長の都合で働かせていませんよね?
店長の都合によって、Aさんが本来受けられるべき権利(今回のケースでは給与)の取り扱いについては、まず民法にて規定されています。
  

民法第536条2項
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」

  
非常に固い表現がされていますが、端的に言うと
  

雇用契約で1日6時間が働く時間と定まっていれば、会社の都合で6時間働くことができなかった場合でも、6時間分の給与を受ける権利がある
  

ということなんですね。
しかし、民法の規定を用いて実際に給与を全額支払ってもらうには、最終的には民事訴訟になってくるだけでなく、この規定自体を排除することも手続きを踏めば可能ですので現実的ではありません。
そこで労働基準法により、民法では不十分である働く人の権利の保障がされています。
  

休業手当
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」

  
Aさんは仕事がないために店長から帰るように指示されていますので、休業手当の対象になり得ますよね?

しかし、今回の事例ではさらに気をつけなければならないのです!
  

1日のうち、部分的に休業した場合

働いている途中で、仕事がなくなったため帰るケースのように、 部分的に働いている場合の取り扱いは更に複雑になってしまうのです。
  

「1日の所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければなりませんから、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない」
(昭27.8.7 基収3445)

  
これは行政から出された通達なのですが、

  • 現実に働いた時間に対して支払われる給与が、平均賃金の6割より少ないときは、その差額が休業手当として支払わなければならない
  • 現実に働いた時間に対して支払われる給与が、平均賃金の6割以上のときは、休業手当の支払いをする必要はない

と定められているんですね!

休業手当は、最低限度の生活を保障する制度ですので、いくら会社からの指示で働けなくなったとしても、そのすべてが保障の対象になるわけではないのです。
  
  

今回の事例にあてはめて考えますと、
時給1,000円で6時間働く予定だったAさんが、
3時間働いて、残りの3時間は早く帰っていますので、
平均賃金を例えば1日6,000円とした場合、

休業手当=平均賃金1日6,000円×0.6=3,600円

給与=1,000円×3時間=3,000円

この差額を計算すると、
3,600円-3,000円=600円

従って、本来は600円の休業手当の支払いが必要になる! というわけです。

  
  

まとめ

実際のところ、休業手当の支払いが適切にされているのか難しいところではあります。
法律を知っていたとしても、アルバイトやパートの契約だと、波風を立てたくないので黙っている方も多いと思います。
しかし、法律を知っておくことで身を守れることもありますので、今回はシフトよりも早く帰った場合の原則的な取り扱いを解説いたしました。
平均賃金の計算方法は、別の記事にて解説いたしますのでご了承ください。

似たような事例としまして、
台風の際における休業手当の記事を過去に書いておりますので、こちらも併せて読んでいただければ幸いです。

lapislazuri33.hatenadiary.jp

休まずに8時間通して働いたら稼げました!――休憩時間には決まりがあるの、知ってました?

f:id:lapislazuri33:20181008182908j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

「休憩なしで8時間続けて働いたから今日は稼げた!」

時給で働く場合、働いた時間がそのまま給与に反映されるので

「休憩時間なんていらないから働きたい!」

って方をたまに見かけます。

一方で、働く側は休憩したいとしても、飲食業や人手の少ない中小企業では、
満足に休憩時間を取ることができない状況もしばしば見受けられます。

私自身も、コンビニで買ったパンをかじる時間すら取れないほど、忙しいときもありました。

しかし、集中して働くためにも休憩時間は必要なものですので、今回は基本的な部分について解説いたします。   
  

  
  

休憩時間の原則

休憩時間については、労働基準法の34条にて、

(休憩)
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

と定められております。

従って、休憩時間は3つの決まり事に基づいて発生することになります。

  • 労働時間が6時間を超えない場合
    そもそも休憩時間は発生しません

  • 労働時間が6時間を超えて、8時間以内の場合
    45分の休憩時間を与える必要があります

  • 労働時間が8時間を1秒でも超える場合
    1時間の休憩時間を与える必要があります

このように、休憩時間の長さについては非常にシンプルに定められていますが、

以下の2点については注意しなければなりません。

労働時間の途中で与える必要がある
休憩は、あくまでも労働時間と労働時間の間に取らなければなりません。ですので、仕事が始まった直後や、仕事が終わる直前に休ませたとしても、休憩時間とはみなされません。

6時間(もしくは8時間)を超えた場合に休憩時間を与える必要がある
当初は6時間丁度の勤務を予定していたけれど、急な来客などで残業してしまった場合であっても、 休憩を取らなければなりません。

  
つまり、

「今日は忙しいから、帰る間際に休んでね」
「早く帰りたいので、休憩はいりません」
「休憩取らずに働くので、その分給与に上乗せしてください」

といった状況はすべて労働基準法違反となってしまうのです。  
  
ただ、6時間を超えたからといって45分の休憩を与えるとなると、
本来は仕事を終えて帰宅できる従業員からすれば、休憩時間であったとしても45分拘束時間が伸びるわけですから、
法律の規制と現場では認識にズレが生じるおそれがあります。
ですので、もともと6時間丁度の勤務する際であっても、45分の休憩時間を取得させることが望ましいですね。

※8時間丁度の勤務であって休憩が45分の場合は、残業が発生することで15分追加して休憩時間を取らなければなりません。

休憩時間についてよくある質問

休憩時間の取り扱いについて、よくある3つの質問についてお答えします。
働く側の気持ちになって考えると腑に落ちるケースが多いですね。

  

昼休みの電話当番

取引先などから、お昼休みのタイミングで電話がかかってくることは、どの会社でもあり得ることです。
急ぎの注文や、重大な不備によるクレームの可能性もありますので、お昼休みの時間すべてを留守電にすることは中々難しいですよね。
しかしお昼休みの時間に電話当番を決めて応対させる場合、
電話当番に割り当てられた時間は労働時間になってしまいます。
当然その時間分については給与を支払う必要はありますし、
定められた休憩時間を取得させていないことになるので別途休憩時間が求められますことになります。

  

ランチミーティング

和やかな雰囲気の中で昼食を取りつつ、業務に関する意見交換を目的とするランチミーティングですが、
結論としては
強制であれば仕事との関連性が強いため、労働時間になる可能性が高い
と言えます。
ランチ、と冠しているだけで、ようは普段のミーティングと同じですからね。
参加するのかどうかは本人の自由意思であれば、休憩時間に該当すると言えます。

  

休憩時間の分割

休憩時間の分割については制限されていませんので、
15分単位等、小刻みに与えることについては可能です。
例えば8時間を超える勤務日において、

10時から10分間・12時から40分間・15時から10分間

のように細かく設定することも問題ありません。

分割した休憩時間の合計が、
勤務時間が6時間を超える場合は45分
勤務時間が8時間を超える場合は1時間
以上になっていれば構わないというわけです。

実務的な観点からすると、あまりに小刻みになる場合は休憩とみなされない可能性もありますので、その点は念頭に置いてください。
5分とか細かすぎる時間与えられても、休憩できるわけない!ってなりますよね。

休憩はしっかり取ろう

休憩時間は、文字通り
「休める時間」
ですので、仕事から完全に切り離された時間でないといけません。
休憩時間中の外出については、例外的に許可制とする等一定の制限を設けることは可能ではありますが、
あくまでも「休む場所」の制限です。

人間の集中力は15分・30分・45分のように15分刻みで低下するとされており、90分が限界と言われたりする中で、

6時間はたまた8時間も通して働くとなると、パフォーマンスの低下は当然免れません。

義務だから休むのではなく、より良いパフォーマンスを発揮するという前向きな考え方で休憩時間を有意義に過ごせる環境を作りましょう。

休憩の決まり事について大まかに解説しましたが、その他にも法律での決まり事がありますので、別の記事で取り上げたいと思います。

忙しくて有給休暇なんて取れません――来年からは有給休暇を取らないといけません!

f:id:lapislazuri33:20181007182306j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

皆さん、1年の間でどのくらい有給休暇を使ったか覚えていますか?

また、同僚や先輩、上司はどのくらい1年の間で休むことができていますか?

昨今世間を賑わせている働き方改革の中で、

有給休暇の取得が義務化

について聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

働き方改革の中で8本の法律が変更となりますが、有給休暇の法律が変わることについての質問が一番多く寄せられていますので、

今回は有給休暇の取得義務化について基本的な内容を解説させていただきます。

過去の記事で有給休暇の取得理由について記事を書いておりますので、併せて読んでいただければ幸いです。

lapislazuri33.hatenadiary.jp

  

  
  

有給休暇の取得が義務化へ

有給休暇が

年間で10日間以上付与される従業員

を対象として、付与された日から1年以内の期間で

5日間の取得

が義務化となります。

今まで有給休暇については、働く側に対して休める権利として与えられていましたので、

取るか・取らないか

働く人の裁量に任せられていました。
その為、働く人から有給休暇の申請がなければ、会社は取らせなくても良かったんですね。

しかし、法改正により有給休暇の取得が義務化となったことで、

5日間取得できていない場合には、取得できていない日数分取得させなければなりません。

逆に、有給休暇を5日間以上取得できている場合には必要ありません。

  
  

有給休暇取得義務化となった背景

そもそも、有給休暇の取得が法律で義務化となる理由には、

日本における有給休暇取得率の低さにあります。

f:id:lapislazuri33:20181007200539j:plain 【出典:厚生労働省・平成29年版過労死等防止対策白書】

持っている有給休暇の日数の内、使用できている日数が半分にも満たないんですね。

有給休暇の取得率が上がることで、 労働時間の削減に直接繋がりますので、日本の大きな課題である長時間労働を防ぐ重要な政策となっています。

取得率の低さを取り巻く要因

有給休暇の取得率が半分にも満たない理由としては

  • そもそも 忙しくて取れない

  • 休んでも仕事の量が変わらないため、翌日に穴埋めをしなければならない

  • 周りが休まないので、自分だけ休みにくい

  • 体調不良など、緊急のときのために取っておきたい

等々が考えられます。

仕事量だけではなく、
日本人独特の心理的な観点から有給休暇を取得できないケースもありますので、 職場環境の見直しが必要不可欠と言えます。   
  

権利と義務の関係に

有給休暇は働く人が持つ、いつでも休むことのできる権利です。

この権利のことを労働基準法では「時季指定権」と表現し、休みたい日を指定することで、
その日については給与が引かれる心配をせずに、働く義務が免除されるのが原則なんですね。

このいつでも休める権利が、2019年4月からは一部分について義務化となるのですが、
義務を背負うのは会社側である点は、注意しなければなりません。

《働く側》
いつでも好きなときに休める権利である。
権利であるため、個人の自由な意思で行使するか決めることができる。

《会社側》
年間10日以上の有給休暇付与する働く人に対して、年間5日間を与える義務がある。
義務であるため、働く側から権利の行使が無い場合であっても、責任を持って有給休暇を取らせなければならない。

従って、
働く人が仮に休みたくなかったとしても、
会社は5日間の有給休暇が取れてなければ、休ませる必要がある
というわけです。
この義務に違反した場合、会社は30万円以下の罰金に課されるおそれがあります。  
  

有給休暇を効率的に取得してメリハリある働き方を

今後は働く人も、働いてもらう人も、有給休暇の取得について考えていく必要があります。

「よく遊び、よく学べ」なんて言葉がありますが、
「よく休み、よく働ける」環境を、お互い協力して作ることが重要なんですね。

実際に、私の会社でも忙しくて休んでられない人が少なからずいますので、仕事の量と仕事の効率を上手く織り交ぜていかないと法律に対応できません。

会社の業種や風土、働く人それぞれの事情に応じて、有給休暇の取得状況を今一度考え、
従業員と会社が一丸となって休み方への改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

有給休暇の申請に理由は必要?不必要?

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こんにちは、knotです。皆さん有給休暇、きちんと取れていますか?

10月に入り、今年もあと3ヶ月を残すことになりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

これから年末に向けて予算の追い込み等で繁忙期を迎えるため、仕事を休んでられないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私もこれから繁忙期のため、怒涛の3ヶ月を予定しています……。

しかしながら毎年10月は国としても皆さんに休んでほしいと思っていることを知っていましたか?

何を隠そう10月は、厚生労働省より仕事休もっか計画という名の有給休暇取得促進期間とされているのです!

仕事休もっか計画とは

有給休暇を積極的に取得することで、ONとOFFのバランスを整えるためのリフレッシュを行い、仕事へのモチベーションを高めることを目的として、厚生労働省がある一定の期間を有給休暇取得促進月間と定める計画

ただ一方で、

「忙しのに何で休むの?そんな理由じゃあ有給休暇は却下させてもらうよ」

「一人でも休まれると仕事が回らなくなってしまうので、有給休暇については見送ってくれる?」

上司や管理職の方からこういった声も聞こえてくるのも事実です。

近年の情報社会では、労働基準法について簡単に調べることができるにも関わらず、令和になってもブラック企業は存在しています。

私も前職時代、有給休暇の申請は暗黙のルールにより出来ませんでした。

今回はこの有給休暇について、一度整理をさせていただきます。  
  

有給休暇とは

仕事をする日=労働日が会社から定められており、

この労働日に休むと欠勤扱いとなり給与から減額されるのですが、

有給休暇とは、この労働日に置いて休んだとしても欠勤と取り扱うのではなく、仕事をしたとみなして給与が支払われる制度です。

(年次有給休暇)

有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。

巷では「有給」や「有休」と呼ばれておりますが、

正式名称を年次有給休暇と言います。

休んでいるのに給与を支払う必要があるので、経営者の方からすれば導入したくない制度になるのかもしれません。

しかし、年次有給休暇の趣旨は、 一定期間継続して働いた方に対して、ゆとりのある生活を送るために心身の疲れの回復を図る休暇と言えます。

働く従業員側は疲れを取ることで仕事へのアプローチが効率的になりますし、

有給休暇を取得させる会社側としては休ませ、仕事へのモチベーションを高めることで生産性を高めることができると考えられますので、

本来は、お互いにとってプラスになる制度なのです。  
 

有給休暇の取得要件

有給休暇は、以下の要件を満たした場合、すべての従業員に当然に権利が発生します。

  • 採用されてから6か月間継続して勤務すること

  • 定められた労働日(出勤日)の8割以上出勤すること

上記の要件により、有給休暇は次の表のとおり付与されていきます。

勤続
年数
6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年6か月
以降
付与
日数
10日  11日 12日 14日 16日 18日 20日

上記の中で、採用された日から6か月後にまず10日間の有給休暇が付与され、

6か月間継続して働いた従業員に対しては、その後1年間ずつ働くことで、表の順に付与される仕組みになっています。

ただし、付与された有給休暇の権利は、付与された日を基準日として2年間で時効消滅してしまうので注意が必要して下さい。   
  

有給休暇の利用目的

結論、有給休暇を取得する際に理由は必要ありません。

心身の回復を図るという観点から法的な制限はできるわけもなく、

最高裁でも明確にされております。

林野庁白石営林署事件(昭和48年3月2日最高裁)
「年次有給休暇の利用目的は、労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、従業員の自由である。」

つまり、

「風邪を引いて仕事ができない場合」はもちろんのこと、

極端に言えば「仕事に行きたくないから有給休暇を取る」ことも問題ありません。

 
  

まとめ

有給休暇は、従業員に与えられた「休みたいときに休む権利」です。

本当に忙しい場合にのみ有給休暇の取得のタイミングを変更させる権利を会社が持っているのですが、また別の機会に説明させていただきます。

自分が有給休暇をどのくらい持っているか、についてはこの記事を参考にしていただければ幸いです。

lapislazuri33.hatenadiary.jp

月給だから関係ありませんよね?――最低賃金は働くすべての人に適用されます!

f:id:lapislazuri33:20181004214022j:plain

こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

「パート・アルバイトだけ気を付ければ、最低賃金は大丈夫ですよね?」

「私は月給だから、最低賃金が上がっても関係ないですよね?」

毎年10月が近づくと、そんな相談があります。

確かにパート・アルバイトの方は基本的に時給だと思いますので気を付ける必要はありますが、

ちょと待ってください。

最低賃金は、働くすべての人に適用されるのです。

となると、時間単価で給与を支払わない場合であっても、当然に関係することになります。

月給だからといって、都道府県で決まっている最低賃金を下回っていた場合、会社は必ず最低賃金法違反になってしまうのです。

今回は、月給の方の最低賃金の考え方をご説明させていただきます。

経営者の方だけではなく、月給で働く方も、改めてご自身の「時給」を確認しましょう。

  
  

  
  

最低賃金の対象となる給与の項目

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な給与に限られます。
具体的には、基本給と諸手当の総合計で考えるのですが、通勤手当や家族手当といったものは最低賃金の対象から除外されることになります。
具体的に除外される項目は、以下のとおりになります。

1.臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

2.1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

3.所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

4.所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

5.午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、
  通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

6.精皆勤手当、通勤手当および家族手当

精皆勤手当などは、毎月必ず支払われる内容ではないと考えられるので、
継続して支払われる性質の諸手当のみを対象に、最低賃金を下回っていないのか確認されるのです。  
  

最低賃金の計算方法

では、実際にどのように計算すれば良いのでしょうか。

率直に言えば、月給を1か月間の所定労働時間で割り算すれば良いのですが、月によっては働く時間数は微妙に変わりますよね?

ですので、1か月ごとに計算するのではなく、年間を通して毎月どのくらい働くのか、平均の労働時間を使用することになります。

計算式は非常にシンプルで、1年間の合計の所定労働時間を、12(1年の月数)で割るだけでして、これを月平均所定労働時間と呼びます。

この月平均所定労働時間を用いて、次の例で計算してみましょう。

東京都にあるシステムエンジニアの会社で働くAさんの場合

1日の所定労働時間:8時間
年間の休日:100日

月給:150,000円
技術手当:20,000円
精皆勤手当:10,000円
通勤手当:10,000円

まずこの中で最低賃金の計算対象になるのは、
月給:150,000円
技術手当:20,000円
の2つです。

年間の休日が100日ということは、
裏を返せば265日が働く日になります。
1日8時間労働なので、265日分働いた時間が1年間の総労働時間になり、
それを12か月で割ると月平均所定労働時間が算出できます。

以上のことから、 150,000円+20,000円=170,000円
265日×8時間=2,120時間
2,120時間÷12か月=176時間(端数は切り捨てて大丈夫です)
170,000円÷176時間=965.9円

Aさんの時給は965.9円に換算され、今年の10月1日から東京都で適用される最低賃金は985円ですので、
月給の方であっても、最低賃金を下回っていることになってしまうのです。

  
  

改めて、確認を

残念ながら月給の方には関係がありません、とはいきませんし、
むしろ月給の方こそ気にしなければなりません。
ここ数年で最低賃金はどんどん上昇しておりますので、今一度ご自身で計算し、確認することをおすすめします。

ちなみに、最近の求人でよく見かける固定残業手当は、

3.所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

に該当しますので、固定残業手当を除いて最低賃金を上回る必要がありますよ。

突然時給を上がるって言われたけどどうして?――最低賃金が変更になりました!

f:id:lapislazuri33:20181003223807j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

「明日から時給上げるから」
9月30日、いつものようにアルバイトに出たら突然時給が上がった方、いらっしゃるのではないでしょうか。

今まで頑張ってきた仕事が評価されたのかも――4月の昇給なら普通に喜べるのですが、10月の昇給にはもう一つ理由があります。

10月1日から全国で最低賃金が引き上げになったのです。

地域によってはタイミングが違うのですが、遅くとも10月6日には全ての都道府県で、最低賃金が上がることになります。

今回はみなさんにも直接関係のある、最低賃金について説明させていただきます。   
  

  
  

最低賃金とは

まず初めに、最低賃金とは会社が支払う給与の最低金額を法律で定め、最低金額以上の給与を支払わなければならない制度です。

会社と従業員は対等な立場であると、労働契約法では定められているのですが、会社側に力が傾いていることは実態として否めません。

「給与が低いので上げてください」なんて中々言えませんよね?

それだけではなく、経済状況や業績によっては著しく低額な労働条件が結ばれる恐れもあるんです。

そこで最低賃金法という別の法律で最低金額を決めておき、その最低金額以上を支払うよう会社に義務付けることで、
どこで働いても一定以上の給与が保証されるように、セーフティーネットの役割としているのです。

ちなみに、十年近く前までは、
一日時間あたり、一日あたり、一週間あたり、一月あたり
と細かく決まっていたようですが、現在は一時間あたりに何円、と統一されています。

最低賃金は2種類あるのご存知でしたか?

地域ごとに定まっていることは、ご存知の方もいるかと思いますが、

実は、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。

  • 地域別最低賃金

地域ごとの産業や生計費の違いを考慮して、都道府県ごとに定められており、最低賃金は生活保護を下回らない水準になるよう配慮するという趣旨も示されています。

  • 特定最低賃金

一定の事業や職業に適用されるもので、地域別最低賃金を上回る水準となります。

特定最低賃金は馴染みがないと思いますが、
地域別最低賃金は、その都道府県で働いている人全員を対象としていますので、地域別最低賃金については必ず知っておいてください。

全国ほぼ同時改定!都道府県ごとの早見表

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適用月日から時給に反映となります。
東京都で働くアルバイトの方でしたら、9月30日までは958円ですが、10月1日からは985円となるので、
経営者の方も、従業員の方も、しっかりと確認しましょう。

最低賃金の今後

3年連続の3%の上昇により、全国で24円以上の引き上げが実施されました。
東京都および神奈川県は1,000円の大台が目前に迫りましたし、時給800円以上の都道府県は28になりました。
働き方改革の一つに、全国加重平均で1,000円を目指すとされていますので、来年以降も注目が集まります。

また今回の引き上げの結果、全国で最も低い最低賃金は761円となっています。
パート募集の貼り紙を飲食店などでよく見かけますが、時給750円での募集は日本全国どの会社でもできませんので、注意してくださいね。

台風だから明日は休んでください――この時の給料ってどうなるの?

f:id:lapislazuri33:20181002204321j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

9月に発生した大型台風に伴って、出勤ができない人もたくさんいたのではないでしょうか。

今年は台風だけでなく大型地震による天災地変が起こるなど、非常に大変な一年です。

台風や大雨により、会社から出勤停止や臨時休業についての相談が非常に多くありましたので、今回は災害時の労務対応についてご説明いたします。

  
  

  
  

ノーワーク・ノーペイの原則と休業手当

まず最初に、従業員は労働する義務を負い、企業はその労働に対する給与を支払う義務を追うことになります。
給与は労働に対する報酬として支払われますので、労働がない部分に対しては従業員側の義務不履行となり給与の支払義務が発生しないことになります。
月給者の方は想像しにくいと思いますが、時給者の方ですと働いた時間分だけ給与が支払われますよね?
ノーワーク・ノーペイはその真逆の考え方で、働かない部分については給与を支払わない、という意味です。

一方で、従業員側が働く意思を持っているにも関わらず、何らかの理由で働けない場合については労働基準法により、

休業手当
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」

と定められており、使用者の責めに帰すべき事由(会社の都合)で従業員を休ませた場合は、平均賃金の6割以上を休業手当として支払う必要があります。

では、台風・地震を理由に従業員に対して出勤停止を促した場合は、どうなるのでしょうか?

  

台風・大雨を理由とした出勤停止

結論から申しますと、給与を支払う義務はありません。

会社の命令により出勤停止となった場合、一見「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するように感じますが、この事由には天災事変等の不可抗力*1の場合は該当しないと行政解釈で示されています。

会社に責任がないので、賃金を支払う必要がないのです。

ただし、次の場合には、休業手当の支払いが求められる可能性があります。

  • 台風が直撃する地域ではなく、若しくは大雨の影響が大きくない等、通常通り出勤ができるにも関わらず会社の判断で出勤停止命令を出す場合

  • 午前中は通常通り出勤しており、午後から台風による公共交通機関の乱れを懸念して早退命令を出す場合

早退命令により午後から休業させる場合は、対象となる1日において支払われる給与を計算し、その金額が平均賃金の6割を下回っていれば、差額を支払うことになります。
ということは、もし早退命令により午後から休業させたとしても、現実に働いた給与の金額が、平均賃金の6割以上であれば、休業手当の支払いは必要がないということです。

給与の支給・不支給について判断を迷った際は、不可抗力の判断を曖昧なまま行わずに専門家に相談することをお勧めします。

  

台風・大雨を考慮した有給扱い

有給休暇は従業員の権利ですので、会社から台風・地震の被害を考慮したとしても、有給休暇を強制的に取得することは労働基準法に抵触します。

ですので、会社から一方的に「台風の為出勤ができない人もいますので、明日は有給休暇として従業員は全員休んでください」と指示してはいけないのです。

しかし、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて出勤をしなかった人は無給扱いとするが、有給休暇の取得促進日として従業員の任意的な使用を促す方法については、問題ありません。

  
  

災害時における労務管理の大切さ

台風・大雨の影響による出勤停止について「給与を支払う必要はない」「有給休暇取得促進日として、任意的に有給休暇を取得してもらう」と説明しましたが、 経営者の方から相談をいただいた際には、「出勤停止の命令はするが、通常通り賃金を支払うこと」を提案しております。 というのも、多少無理してでも出勤をしたいと考える方がいるからです。

天災により出勤停止になると、取引先の会社も同じように臨時休業になっているケースが多く、平常時よりも電話やメールに追われることなく、集中して仕事に取り組むことができます。 給与の減額もなく、集中して仕事ができるのなら、多少の無理も承知の上となります。

都市部だと沿線によっては運休していない場合もありますし、マイカー通勤ならば出社する手段は残っていますが、どの手段であっても、通勤中に危険を伴ってしまいます。

万が一、従業員が大雨の中で車を運転し、人身事故を起こしてしまった場合、会社に対して安全配慮義務違反として損害賠償請求が問われる可能性は否定できません。

従業員の安全面を第一に考えて、トラブルを未然に防止することが大切ではないでしょうか。

  
  


*1:不可抗力とは、次の2つの要件を満たす必要があるとされています。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大限の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

10月1日は内定式!――内定通知書って?

f:id:lapislazuri33:20181001063031j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

新卒における就職活動では、本日10月1日は一般的に内定式と言われております。

私も新卒の時は内定者懇談会という形で内定通知書を受け取り、「来年の春からこの企業で頑張って働こう」とモチベーションが高まったことを覚えています。

転職した際は中途採用ということもあり、内定式や内定懇談会はなかったものの、内定通知書をいただき、気が引き締まったことを今でも覚えております。

今回は、そんな内定通知書がどのような意味を持つのか、ご説明いたいます。

  

  
  

内定通知書とは

内定通知書とは、企業が「この人を採用しよう!」と内々で決定した事実を応募者の方に伝える書類です。
実際に採用して働いてもらうには、お互いの意思表示の下で労働契約を交わさなければなりませんが、この労働契約は極端な話ではありますが、 「働いてくれますか?」「よろしくお願いします」という口頭の会話でも成立するのです。*1

  

労働契約法は、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と規定し、(略)
また、この合意については、契約書の作成などの要式は必要とされておらず(略)、口頭によるものでもよく、また、明示の(明白に表示された)ものである必要もなく、当事者の態度などの客観的事実から明確に認定できる黙示の合意でもさしつかえない。
【菅野和夫『労働法(第十一版補正版)』弘文堂,p.148】

  

しかし採用や雇用条件を巡るトラブルは、
「言いました」「言ってません」
の水掛け論から生じることが日常茶飯事であり、採用という企業と応募者双方において大切な、労働契約の始まりにおけるトラブルを防止するために、内定通知書の交付が一般的になっているのです。
従って内定通知書は、企業からまず「働いてくれますか?」の問いかけを書類として明確化するためのものなんですね。   
  

内定通知書が届いたら

この大切な内定通知書ですが、ペーパーレス化の要因からか、郵送や手渡しだけではなくメールでのやり取りも増えてきております。
転職エージェント等を利用して転職する場合は、利用しているエージェント経由で内定通知書が発行されることもあります。

さて、大変だった就職活動を終えてようやく手に入れた内定通知書ですが、記載されている事項としては次の二つの項目のように非常にシンプルなケースが多いです。

  • 入社日(初出勤日)
    2019年4月1日 等

  • 就業する場所や所属となる部署
    東京都新宿 本社 営業部 等

上記の他には、月給金額や労働日といった労働条件が簡単に明示されている場合があり、内定を受け入れる重要な判断材料となりますのでしっかりと確認しておきましょう。

そして企業から「働いてくれますか?」という問いかけに対して応募者は、
「よろしくお願いします」なのか「申し訳ありません」の返答をする必要があります。
応募者の方が、数多くの企業に対して就職活動や転職活動に取り組んでいることが殆どですので、内定通知書を出したとしても本当に入社するのか判断に困ることになります。その判断を明確にし、双方の合意による雇用契約を結ぶために内定承諾書があるのです。

「よろしくお願いします」と入社を決意した場合、この内定承諾書を企業側へ返送することで、内定に関する一通りの手続きが終了することになります。

  

内定承諾書を提出後でも辞退が可能なのか

内定承諾書を交わした後であっても、内定辞退をすることは可能です。
雇用契約は、企業側の意思表示を内定通知書により行い、応募者側の意思表示を内定承諾書にて行うことで成立します。
内定辞退、つまり一度交わした雇用契約の解約については、民法627条1項によって

(期間の定めのない雇用解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

と定められています。
ですので実際に働き始める遅くとも2週間前までには、内定辞退を申し出ることが非常に大切です。
2週間を切ってしまっても、厳密に言えば内定辞退は可能ですが、内定者研修のような教育費用を損害賠償請求される可能性が少なからずありますし、モラルの観点から避けましょう。

  

内定の時こそ慎重な判断を

応募者からすれば、どの企業に就職するのか、人生が大きく変わる分岐点です。
しかし一方企業側にも、新しい人材を採用するには非常にコストや時間を費やすことになりますので、
内定通知書の意味や効力を正しく理解し、誠意をもって就職活動や転職活動に区切りをつけましょう。

  


*1:労働契約を口頭で行う場合には、労働条件を書面にて通知する必要はあります。

今日は給料日!――給与支給明細書を見てみよう!

f:id:lapislazuri33:20180929180914j:plain こんにちは、HRコンサルタントのknotです。

早速ですが皆さん、給料日は楽しみにしていますか?

私は非常に楽しみにしております。寧ろ、給料日の為に働いていると言っても過言ではありません。どれくらい頑張って働いたのか、お金という物差しで測ることができるのです。

そんな給料日に受け取る給与明細書ですが、中身をまじまじと見たことがあれば、そうでない方もいると思います。

仕事をしている上で、新しく社会人になられた方や、何年もサラリーマンとして勤めている方とお話しする機会がよくあるのですが、手取り金額しか気にしていない方が意外と多い印象を受けるんですよね。

月給者の方ですと毎月の給料が変動することはあまりありませんが、会社がきちんと人事・労務管理をしているのか、この給与明細書から読み取ることができる大切な書類です。

ですので今回は、給与明細書の留意点を簡単にご説明します。

  

 
  

給与支給明細書に書かれている項目

皆さんに手渡される給与支給明細書には、基本的には大きく3つの項目に分けて表記されています。

  • 勤怠

出勤日数 所定労働時間 普通残業時間 深夜残業時間 休日労働時間 有給日数 有給残日数

  • 支給項目

基本給 職務手当 資格手当 通勤手当 残業手当 深夜残業手当 休日手当

  • 控除項目

健康保険料 介護保険料 厚生年金保険料 雇用保険料 所得税 住民税

会社ごとに記載されている項目名称は若干異なりますが、大きく変わることはありません。

3つに分類された項目の内、支給項目の合計がいわゆる額面金額と呼ばれるものです。
この額面金額から、控除項目の合計金額を差し引きしたものが手取り金額です。文字通り手元に残る金額というわけなんですね。

 
 

勤怠・支給項目から読み取る人事・労務管理

勤怠・支給項目では、普通残業時間 有給日数 に注目しましょう。

  • 普通残業時間に注目する理由

法定労働時間を超えた労働時間については25%以上の割増賃金の支払いが必要であり、1日の残業時間については原則として1分単位で計算する必要があるため、法令が遵守されているか見極めることができます。 *1

  • 有給日数に注目する理由

有給休暇は、 雇い入れ日の日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合に当然に付与されるものであり、 付与される日数も定められているため、普通残業時間と同じように法律に沿って適切に付与されているのか簡単に確認することができます。

1日8時間・週5日働く、いわゆる正社員の場合は下の図に沿って有給休暇が付与されることになります。*2

勤続
年数
6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年6か月
以降
付与
日数
10日  11日 12日 14日 16日 18日 20日

給与明細書に記載することは義務付けられていませんが、関与させていただいている企業先様に対しては、有給休暇の取得促進による生産性向上を図るため、給与明細書への記載を推奨しております。

  
  

控除項目から読み取る人事・労務管理

控除項目では、健康保険料 厚生年金保険料 雇用保険料に注目しましょう。

  • 健康保険料および厚生年金保険料に注目する理由

健康保険料や厚生年金保険料は、基本的には一度定められた保険料は1年間変わりません。従って毎月の控除金額は固定されており、保険料は会社と被保険者である従業員で折半して負担するため、保険料の徴収漏れや徴収過多を確認することができます。

保険料の徴収は、原則被保険者となった月の翌月から支払う給与より控除となります。

  • 雇用保険料に注目する理由

雇用保険料は、上記の健康保険料や厚生年金保険料と異なり、毎月変動します。しかし雇用保険料の計算方法は非常にシンプルであり、支給項目の総合計(額面金額)に雇用保険料率を掛けた金額になります。そのため徴収漏れや徴収過多を簡単に確認することができます。

平成30年度の保険料率は、一般的な事業所で0.003となっております。

  
パートやアルバイトといった雇用形態であっても、労働時間が長い方については健康保険や厚生年金保険、雇用保険への加入義務が生じる場合がありますので、控除項目から加入の有無を確認しておきましょう。

  
  

今一度給与明細書の確認を

給与明細書は、労働時間の管理状況、健康保険等の各種保険が適切に処理されているのか確認できる書類であり、人事・労務管理が正しく処理されているのか客観的に見ることができますので、手取り金額だけではなく他の項目にも注目する癖をつけておくことは非常に大切です。
ぜひ次の給料日が訪れた際には、一度給与明細書に目を通してください。

今回は、給与明細書について注目すべき項目を簡単に説明させていただきました。詳しい内容については、別の記事にて順次紹介させていただこうと思います。


*1:従業員に不利にならない端数処理として、1か月の残業時間を集計し、30分未満の端数が出た場合には切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げて計算することは認められていますが、その日ごとに端数処理を行うことは労働基準法違反となります。

*2:労働日数が短い場合は、労働日数の短さに応じて、比例付与されます。